鈴木孝征研究室

卒業論文要旨

2016年度

トマトの新しい台木の品種の形質に寄与する遺伝子の同定

伊藤 蒼梨

植物工場で栽培するトマトの収量を増加させることができる新しい台木品種の開発が求められている。 すでにオランダにおいてこの目的のために使用されているMaxifort株と日本で耐病性を高めるために使用されているSpikeもしくはSpike23株とを交配し、そのF1の形質を評価しながら、その形質に寄与する遺伝子の同定を試みた。

それぞれのF1の葉からDNAを抽出し、多数のSNPマーカーをPCRと次世代型シーケンサーを用いて遺伝子型を同定した。 143個のF1を調べ、QTL解析を行った結果、評価した形質(葉の巻き、葉の大きさ、茎の太さ)のそれぞれの寄与する染色体の領域を特定することができた。 今後それぞれの領域にある遺伝子マーカーを使うことで、株の選抜を簡便かつ速やかに行うことができると期待される。

イネの胚発生に必要な遺伝子に関する研究

池之上 稜介、岩井 智寛、佐々木 刀誠、福岡 宏洋

植物の発芽後の形態形成は主に分裂組織によって担われている。 茎頂および根端に存在する分裂組織は胚発生の過程で形成されるが、その遺伝的な基盤については未解明の部分も多い。 本研究はイネの胚発生に異常を示す変異株Mutant3およびMutant4の原因遺伝子を同定することを目的とした。 変異株のゲノムを次世代型シーケンサーによって解析したところ、表現型と連鎖していると考えられる変異が複数見つかった。 本研究ではこれらの変異の有無を確認するとともに、表現型との連鎖を調べた。

種子中の胚を観察したところ、Mutant3では野生株と変異株の両方が確認された。 このことから使用した種は変異のヘテロで保持していた親に由来することが確認できた。 次に変異が存在する可能性が示唆された変異はなく、この遺伝子は胚発生の異常とは関係ないことがわかった。 後者のOs05t428600の塩基配列を調べたところ、次世代型シーケンサーの結果と一致し、1937番目と1944番目の塩基が置換していることがわかった。 しかし解析したすべてのサンプルにおいて塩基置換がヘテロで見つかったことから、表現型との連鎖を確認することはできなかった。

イネの胚発生に必要な遺伝子に関する研究

岡田 祐典

胚発生に異常を示すイネの変異株Mutant3の原因遺伝子の候補の一つOs05t428600遺伝子の塩基配列を解析した。 この遺伝子の1937番目と1944番目の塩基はMutant3においてGからAに置換していることが次世代シーケンサーの結果より示唆されており、サンガー法によっても確認されている。 しかし、調査したサンプル全てで変異が見つかったことから、野生型株の塩基配列を調べる必要が生じた。 そこで、野生型株の代わりにOs05t428600遺伝子には変異がないと思われるMutant4の塩基配列を調べることにした。

シロイヌナズナの油脂合成系遺伝子活性化因子の探索

廣瀬 明里

植物油は様々な用途があり、今後ますます生産性を向上する必要がある。 本研究はナタネと同じアブラナ科に属するシロイヌナズナを用いて、種子成熟過程での油脂合成系遺伝子の活性化因子の実体を明らかにし、油の生産性向上に役立てることを目的とする。 種子形成中期に作られる転写活性化因子WRI1はプラスチドで働く脂肪酸合成系遺伝子を一斉に活性化するが、それらより後期に働く小胞体でのトリアシルグリセロール合成系遺伝子DGAT1の発現に関わる直接の活性化因子はまだ明らかにされていない。 そのため、DGAT1にルシフェラーゼ遺伝子を融合させたLUCレポーター遺伝子を用い、アクティベーションタギング法によって活性化因子の探索を行った。 LUC活性を指標にスクリーニングを行った結果LUCの活性が高まった変異株を複数得ることができた。

次世代型シーケンサーを用いてT-DNAの挿入位置を調べたところ、いずれの株も複数の遺伝子座にT-DNAが挿入されていることが分かった。 そのため原因遺伝子を同定することができなかった。 そこで、戻し交配によってT-DNA挿入遺伝子座を分離させ、LUC活性と連鎖する遺伝子座を明らかすることにした。 実験を行った結果、遺伝子座を分離することができたが、LUC活性と連鎖しているものはなかった。 T-DNAの検出とLUC活性の定量の両方の精度を高めることが今後の課題として残った。

モウセンゴケの窒素代謝に関わる遺伝子の研究

平尾 玄輝

窒素はカリウム、リンと並ぶ植物の三大栄養素であり、その多くは根から硝酸イオンの形で吸収されている。 湿地では土壌中の栄養素が少なく、そうした環境で生育するモウセンゴケは虫を捕らえて栄養を補っていると推測されている。 この研究ではモウセンゴケの窒素代謝を解明するためにモウセンゴケの硝酸還元酵素(NR)、亜硝酸還元酵素(NiR)、硝酸輸送体を同定し、それぞれの遺伝子の発現量を調べた。 また虫を栄養源とするためにモウセンゴケが獲得した遺伝子群の同定を試みた。

シロイヌナズナのNR、NiR、硝酸輸送体の遺伝子に対してモウセンゴケの最も似ている遺伝子を探した。 NRとNiRはそれぞれ1つのコンティグが見つかり、硝酸輸送体は4つのコンティグが見つかった。 硝酸イオンを与えた場合の発現量を調べたところ、モウセンゴケのNR、NiRは硝酸イオンによって発現が誘導されていた。 また硝酸輸送体も1つは明確な誘導が見られたが、他は低発現であったり、誘導されなかったりした。

硝酸イオンまたはゼラチンにより発現が誘導される遺伝子を探したところアスパラギン合成酵素が見つかった。 これは吸収した窒素を同化するために発現していると考えられた。

クンショウモの単離と観察

飯田 雅史、辻井 康祐

クンショウモ (Pediastrum属) は世界中の湖沼に住んでいる微細藻類で、その特徴的な形態で容易に区別することができる。 通常は8、16、32個という2のn乗の数からなる細胞が集まって群体として生育している。 群体を構成する細胞は1つの親の細胞に由来し、その増殖メカニズムは興味深い。 また形態も様々であるが、それらを決めている遺伝子は何もわかっていない。

クンショウモの遺伝的な多様性および細胞分裂を研究するために、中部大学30号館横の池からクンショウモを単離した。 適当な培地を選択することで、純粋培養することに成功した。 形態を観察したところ主に16または32個の細胞からなる群体が見られた。 18S ribosomal RNAの塩基配列を調べたところ、Pediastrum duplexのものと一致した。

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